お点前をしているとき、頭が空っぽになります。
四十五年お茶を続けてきて、これがお茶のいちばんの効用かもしれないと思うようになりました。今日はそのことを書いてみます。
考えごとが消える時間
お点前の間は、目の前のことしか考えられません。帛紗をさばく、棗を清める、柄杓でお湯を汲む。一つひとつの動作に気持ちを向けていると、日常の心配ごとがすっと消えているのです。
終わったあとに「ああ、何も考えていなかった」と気づきます。悩みが解決したわけではないのに、気持ちが軽くなっている。不思議なものです。
マインドフルネスと言うそうですね
最近、テレビで「マインドフルネス」という言葉を知りました。今この瞬間に意識を向けることで心が整う、という考え方だそうです。
それを聞いて、あら、それはお茶のことではないの?と思いました(笑)。
茶道は五百年前から、同じことをしてきたのだと思います。禅の修行から生まれたお茶ですから、当然といえば当然かもしれません。「茶禅一味」という言葉もあるくらいです。
なぜお点前で無心になれるのか
私なりに考えてみました。お点前は、手順が細かく決まっています。次はこれ、その次はこれと、体を動かし続けます。
決まった動きに体を預けると、頭が口を挟む隙がなくなるのですね。若い頃は「次は何だったかしら」と頭で考えながらでしたが、体が覚えてしまうと、考えなくても手が動きます。
そうなったとき、初めて頭が静かになりました。よく言われる「身に付く」とは、こういうことなのだと思います。
忙しい方にこそ、お茶をすすめたい
現代は情報が多くて、頭を休める時間がないと言われます。スマートフォンを見ない時間を作るのも難しいとか。
お茶室には時計もスマートフォンもありません。釜の煮え音と、お湯を汲む音だけ。この静けさは、今の時代にはかえって贅沢なものかもしれません。
週に一度、お稽古の二時間だけでも頭を空っぽにする。それだけで、ずいぶん心が軽くなります。何かに没頭したいと思っている方に、お茶はとても向いていると思いますよ。

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