「抹茶のお菓子は好きだけど、抹茶って煎茶と何が違うの?」
お稽古を始めたばかりの方から、よくそんなことを聞かれます。
答えようとすると、意外と言葉に詰まってしまって。
私も若い頃は「お茶はお茶」くらいの気持ちでいました。
師匠から「それでは困る」と言われたとき、恥ずかしかったのを今でも覚えています。
三つとも、同じ木の葉から作られます
抹茶も、煎茶も、玉露も、もとはすべて同じ植物——「チャノキ」の葉から作られています。
同じ葉なのに、どうしてこんなに味が違うのでしょうか。
答えは「育て方」と「加工の仕方」にあります。
これを知ってから、お茶を飲むたびに「この葉はどんなふうに育ったのだろう」と考えるようになりました。
覆いをするかどうかで、味がかわります
抹茶と玉露は、収穫の前に日光を遮って育てます。「覆下栽培(おおいしたさいばい)」という方法で、茶畑に黒いよしずや布をかけて、二十日から三十日ほど暗くして育てるんです。
日光が当たらないと、茶葉はうまみのもとになるアミノ酸をたくさん蓄えます。
それと同時に、苦みの原因になるカテキンの量が減ります。
だから抹茶と玉露は、うまみが深く渋みが少ないんですね。
煎茶は、日光を遮らずに育てます。
さっぱりとした清々しい味は、そこから来ているのだと思います。
抹茶と玉露の違い——加工の仕方がまるで違います
同じように覆いをして育てた葉でも、そのあとの作り方がまったく違います。
抹茶は、蒸した葉から茎と葉脈を取り除いて乾燥させます。
これを「碾茶(てんちゃ)」と呼びます。
碾茶を石臼でゆっくり挽いたものが、抹茶です。
師匠が昔、「石臼の音が好きだ」とおっしゃっていました。
ゴリゴリと静かに回る音。
その頃の私には少しも気にならなかったのに、今は何となくわかる気がします。
玉露は、覆いをして育てた葉を煎茶と同じように蒸して揉んで仕上げます。
お湯は低め——五十度から六十度くらいで、ゆっくりと旨みを引き出します。
甘みとうまみが深く、口の中にじんわり広がるのが玉露の味だと思っています。
茶道で使うのは抹茶だけ
茶道のお稽古でお茶を点てるとき、使うのは抹茶だけです。
お茶碗に抹茶の粉を入れて、湯を注いで、茶筅でシャカシャカと泡立てる——あの点て方は、石臼で挽いた粉末の抹茶だからこそできることです。
煎茶や玉露は、茶葉をそのまま湯に浸して飲みますから、点てることができません。
お稽古では「薄茶(うすちゃ)」と「濃茶(こいちゃ)」の両方を学びます。
薄茶はお稽古でよく点てる、泡立てたさらりとしたお茶。
濃茶は抹茶をたっぷり使って練るように点てる、どろりと濃いお茶です。
どちらも抹茶から作られますが、使う抹茶の種類や量が違います。
薄茶のことが気になった方は、こちらもどうぞ。
→ おうす(お薄)とは?薄茶の意味と点て方の基本
三つの味、私なりに言うと
三つの違い、ざっくりと書くとこんな感じでしょうか。
煎茶は、日光をたっぷり浴びて育った葉を蒸して揉んだもの。
すっきりとした緑の香りと、ほどよい渋み。
日本茶の定番です。
玉露は、日光を遮って育てた葉を蒸して揉んだもの。
うまみが深く、甘みがある。
低温のお湯でゆっくりいただくのが好きです。
抹茶は、日光を遮って育てた碾茶を石臼で粉にしたもの。
うまみと少しの苦みが一緒にやってくる味。
茶道でお茶碗に点てて飲みます。
同じ日本のお茶なのに、こんなに個性が違うものなんですね。
面白いと思いませんか。
今年の夏は膝の具合もあってあまり動けませんが、こんな暑い日には冷たい煎茶を一杯いただきながら、お茶のことをぼんやり考えています。
涼しくなったら、また玉露を低温で点てる練習をしてみたいものです。

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