茶巾とは、茶碗の内側や口をぬぐう白い布です
茶巾(ちゃきん)は、お点前で茶碗をぬぐうための白い布です。茶碗に湯を注いで温め、湯を捨てた後に、内側や口縁(こうえん)と呼ばれる口のふちを拭きます。茶碗の中に小さくたたんで入っている、あの白い布ですね。お茶を点てる前に茶碗を整える、大切な道具の一つです。
素材は麻がよく使われます。綿のものもありますので、用意する時には素材を確かめてください。大きさは広げて横三十センチ、縦十五センチほどが目安ですが、品物によって違います。茶碗に入っている姿は小さいのに、広げると案外横長なんですね。初めて求める方は、習っている先生に使うものを聞いておくと迷わずに済むと思います。
私も初めは、ただの布なのに、どうしてこんなに丁寧に扱うのだろうと思っていました。茶碗をぬぐえれば、それでよいように見えたのです。四十五年以上お茶を続けた今は、茶碗を大切に扱うことと、この小さな布を丁寧に扱うことが、つながっているように感じます。
水を含ませてから、茶巾をたたみます
茶巾は乾いたまま使わず、使う前に水で清めて絞ります。水がぽたぽた落ちるほどでは困りますが、固く絞りすぎても茶碗になじみにくくなります。ほどよく湿り気を残す。この加減は、私は今でも難しいと思います。力いっぱいねじるより、布に残る水分を見ながら整えたいものです。
ここでは、表千家で私が覚えてきたたたみ方の、基本の考え方を書きます。水で清めて絞った茶巾を横長に広げ、布の形を整えます。しわを全部伸ばそうと強く引っ張る必要はありません。長い辺に沿って、下側を折り上げ、上側を重ねるように三つ折りにして、細長い帯の形にします。端を見ながら、幅がそろうように重ねます。
細長くなった茶巾を、今度は決められた長さに折り返し、茶碗へ収めやすい小さな長方形にします。折り目を爪で強く押さえて、ぺたんと固めるものではありません。ふんわりしすぎても扱いにくいので、清潔に、形よく、次の動作で取りやすい姿を心掛けます。
たたみ方は、流儀や先生の教えによって細かな違いがあります。文章だけでは、右からだったか左からだったか、かえって迷うかもしれませんね。折り返す位置や順番は、この説明だけで決めず、先生の手元と照らし合わせてください。私も初めは家で繰り返し練習しましたが、お稽古になると折り目が乱れて、中々思うようにいきませんでした。
茶碗への仕組み方と、形が整わない時の見直し
お点前の前には、茶巾を茶筅(ちゃせん)、茶杓(ちゃしゃく)とともに茶碗へ仕組みます。茶巾はたたんだ姿を縦長にして、茶碗の内側に沿わせるように収めます。ただ押し込むのではなく、取り出す時に自然に手が掛かるように置くのです。私は表千家で、たたんだ端が左手前にくるように習いましたが、端の向きも先生に確かめてください。
初心者の頃、私は収まった形ばかり見ていました。けれど、お点前が始まれば、茶巾を取り出し、茶碗をぬぐい、またたたむ動作へ続きます。仕組む時から、その先の動きが考えられているんですね。小さな向きの違いにも意味があると思うと、面白いです。
うまく小さくまとまらない時は、初めの三つ折りの幅を見直します。ここが斜めになっていると、後で折り返しても端がそろいません。水分が多すぎれば形が崩れやすく、絞りすぎればしわが強く残ります。私も、手順を忘れたと思っていたら、絞り方が違っていただけということがありました。
急いでいる時ほど、指先に余分な力が入るものです。端が乱れたまま先へ進めず、一度広げて、湿り気と三つ折りの幅を見てみます。茶巾は小さいので、ごまかせそうで、ごまかせません。長くお茶を続けても、中々思うようにはなりませんね。
薄茶と濃茶では、扱いを確かめながら
薄茶(うすちゃ)でも濃茶(こいちゃ)でも、茶巾で茶碗をぬぐうという役目は同じです。薄茶のお点前では、茶碗を温めて湯を捨てた後、口や内側をぬぐいます。私が最初に覚えたのも薄茶での扱いでした。布を動かすことだけに気を取られず、茶碗を支える手も落ち着かせたいところです。
濃茶では、お点前に応じて茶巾の扱いや茶碗のぬぐい方を、さらに細かく覚えていきます。私には、茶巾を開いて茶碗を包むように扱う場面も、初めは難しく感じられました。ただ、濃茶なら必ず茶碗全体を包む、という一つの手順ではありません。茶碗やお点前による違いもありますので、今習っている扱いを確かめることが大切です。
薄茶だから簡単に済ませてよいということでもないんですね。どちらも、お客様にお茶を差し上げるための支度です。茶巾がどこで使われるかを知っていると、お点前を見ている時も、一つ一つの動きが少しわかりやすくなると思います。
夏の洗い茶巾は、水の涼しさもごちそうです
暑い風炉の時季には、「洗い茶巾」というお点前があります。口の広い平茶碗に水を張り、その中へ茶巾を入れておきます。お点前の途中で水から取り上げ、絞ってたたみます。いつものお点前では水屋で済ませておく扱いを、お客様の前で見せるところに趣があります。
水を含んだ白い布。指先から落ちる雫。少しずつ小さく整っていく茶巾。そうした姿にも、涼しさを感じるのだと思います。冷房のなかった時代には、小さな水の景色が、今よりもっと身近な涼だったのかもしれませんね。洗い茶巾は、単に汚れた茶巾を洗うという意味ではないのです。
処暑を過ぎても、九州では暑さが残ります。水を含ませた茶巾に触れると、指先だけ少し涼しくなるようです。いつものたたみ方を覚える時にも、形を作ることばかり急がず、水や布の様子を見たいと思います。なお、洗い茶巾の細かな手順も、習っている流儀に従ってください。
使った茶巾は、洗って十分に乾かします
お稽古が終わったら、水屋(みずや)で茶巾を洗います。普段の手入れは、水やぬるま湯でやさしくすすぐことから。布を傷めるので、ごしごし強くこすらないようにします。汚れが残っている時は、すすぐだけで済ませず、素材に合った洗い方を確かめてください。
洗った後は形を整え、半乾きのうちに茶巾たたみにしておくと、折り目を整えやすくなります。ただし、湿ったまましまわないこと。重なった部分まで十分に乾いたのを確かめてから収納します。使う前に水を含ませることと、使い終えて湿気を残さないことは、分けて考えたいですね。
白い茶巾も、使い続けるうちに黄ばみが出ることがあります。白さだけでなく、汚れやにおいが残っていないか、布が傷んでいないかも見ておきます。洗って、形を整えて、乾かす。お点前の前後にあるこうした水屋仕事も、お茶を支える大切な時間だと感じます。
よくある質問
茶巾と懐紙は同じものですか? 茶巾は茶碗をぬぐう布で、懐紙(かいし)はお菓子をいただく時などに使う紙です。どちらも茶席で見かけますが、役割が違います。
茶巾は乾いたまま茶碗に入れてよいですか? 普段のお点前では、水で清めて絞ってからたたみ、茶碗に仕組みます。水が滴らず、布が茶碗になじむほどの湿り気を残します。
どの流派でも、たたみ方や置く向きは同じですか? 細かな違いがあります。特に折り返す順や端の向きは、文章だけで覚えようとせず、習っている先生の扱いを確かめてください。
まとめ
茶巾は、茶碗をぬぐう小さな白い布です。水を含ませ、たたみ、茶碗へ仕組むところから、使った後の手入れまでがつながっています。きれいな長方形にすることだけが目的ではなく、茶碗を大切に扱い、次の動作へ無理なく移るための形なんですね。
次のお稽古では、先生が茶巾を絞った後の湿り気を、一度確かめてみてください。折り方だけを見ていた時には気づかなかったことが、わかるかもしれません。私もまだ途中ですが、小さな布の扱いを、また丁寧に確かめてみようと思います。

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