帛紗をしまおうとして、端がつかえる。帯に挟もうとしても、うまく収まらない。お点前の途中なら、それだけで次の動きがわからなくなりそうですね。小さなところですが、本人には気になるものです。
秋が深まっても、風炉のお茶が続く時季があります。ただ、「帛紗が入らない」は、秋に特有のお点前の名前ではありません。身につける時や、袋へしまう時の困りごとです。季節のお点前を覚える前に、手元の支度で止まってしまう。そのような方に、確かめるところをお伝えしたいと思います。
帛紗が入らない時は、入れる場所と折り重なりを確かめます
帯に入らないなら、帛紗を挟む位置や向き、帯との間の窮屈さを見ます。帛紗ばさみに入らないなら、たたんだ大きさと袋の内側の寸法、中に入れた物の厚みを確かめます。どちらも、力を入れて押し込む前に、一度取り出してみてください。
「たたみ方が悪いのかしら」と思うかもしれませんが、それだけが原因とは限りません。袋が小さい場合もあれば、懐紙を沢山入れていて、帛紗の分が収まらない場合もあります。
帛紗は「ふくさ」と読みます。お点前で茶器や茶杓を清める時などに使う布です。その帛紗を持ち運ぶ入れ物が「帛紗ばさみ」。布そのものと入れ物の名前が似ていますので、初めは少し紛らわしいですね。
なお、お祝いの金封を包む袱紗も「ふくさ」です。祝儀袋が入らないというお困りなら、金封用の袱紗の大きさや形を確かめる話になります。ここでは、茶道で使う帛紗を扱います。
お点前で使う道具の役目は、茶道の道具の使い方は?役目から覚える、秋分のお茶の支度や茶道の道具とは?家の器から考える、名前と役目、大切にすることにも書いています。
帛紗ばさみに入らないなら、中を空にしてみます
私なら、袋へ入れてある物をいったん出し、たたんだ帛紗だけを収めてみます。これで入るなら、帛紗の大きさだけでなく、ほかの小物との重なりが関わっていそうです。
懐紙、菓子切りの鞘、予備の小物。平らに見えても、重ねると厚みが出ます。とくに袋の折り返すところへ厚い物が集まると、口が閉じにくくなりますね。
見ておきたいのは、この三つです。
- 帛紗の端が袋の入口でつかえるのか。
- 中には入るけれど、折り返しや留め具が閉じないのか。
- しまえるけれど、取り出す時にほかの物まで出てくるのか。
入口でつかえるなら、たたんだ帛紗の縦横と、実際に使える内側の広さを比べます。外寸には縫い代や縁の部分も含まれますから、袋の横幅だけを見て「入るはず」とは言い切れません。
閉じない場合は、予備の懐紙などを別にして、必要な分を収め直します。全部を一つへ入れたい気持ちはわかりますが、帛紗を取り出すたびに中身が崩れるなら、少し分けたほうが使いやすいでしょう。
茶論の紹介でも、帛紗ばさみは懐紙や帛紗を収める小さめの袋、数寄屋袋はほかの小道具も一緒に収められる大きめの袋として説明されています。持ち物が多い時には、こうした入れ物の違いも役立ちます。茶論「道具―数寄屋袋―」
ただし、同じ名前の商品でも、仕切りや収納できる量は違います。買い替えるなら、いつも持参する物を伝えて選びたいですね。私は柄にも目が向きますが、口を開けたところまで見ておこうと思います。
帛紗のたたみ方は、収納とお点前で分けて考えます
小さくすれば入りそうだからと、何度も折り足すと、今度は厚くなります。角が内側で折れ込んでいるだけでも、そこだけ膨らみます。袋へ戻す前に、清潔な平らな場所で広げ、端の重なりを見直すとよいと思います。
ここで気をつけたいのは、持ち運ぶ時のたたみ方と、お点前で道具を清めるためにさばいた形を、同じに考えないことです。
表千家の懐中するためのたたみ方として、千紀園では、縫い目のない辺である「わさ」を右にして広げ、左半分を右へ、下半分を上へ、右半分を左へ重ねる八つ折りを紹介しています。図を見ながら確かめると、出来上がりの向きもわかりやすいです。千紀園「帛紗のたたみ方~表千家編~」
これは、懐中する時の説明です。帯につける時や、茶器を清める途中の形まで、すべてこの形にすればよいという意味ではありません。
お稽古で教わった形がある方は、その形へ戻してから、入れ物に合うかを見てください。折る回数が合っていても、途中で端がずれることはあります。出来上がりだけを押さえつけるより、どの折り目でずれたかを見たほうが直しやすいと思います。
私は、きれいにたたむという言葉だけでは、初めての方に伝わりにくいと感じます。角が中へ巻き込まれていないか。片側だけ厚くなっていないか。見るところがわかれば、自分でも確かめられますね。
帯に帛紗が入らない時、洋服で挟む所がない時
お点前では、帛紗を腰につけ、必要なところで取って使います。袋へ全部しまう時とは違い、次の動きで手に取れるようにつけるのですね。
帯に入れにくい時は、いったん手を止め、習った位置と向きに戻ります。布の角が折れ込んでいないか、挟もうとしている所に帯の重なりが集まっていないかも見ます。入らないからと指で布を丸めて押すと、形がわからなくなりそうです。
帯へのつけ方には、流儀や装いによる違いがあります。男女で扱いが異なる場合もありますので、写真で見た一つの形を、そのまま自分へ当てはめないほうがよいでしょう。
先生に見ていただくなら、「入らないのです」だけでなく、いつものように挟もうとするところから見ていただくと伝わります。つける場所の問題なのか、帛紗の持ち方なのか。その場で確かめられますから。
洋服では、そもそも帯がありませんね。ウエストに挟める所がない服なら、たたみ直しても解決しません。稽古用のベルトなどを使うか、教室での方法を尋ねておきます。ポケットに入れば同じ、とは考えず、お点前の途中で無理なく取れる位置を教わりたいです。
着物でも洋服でも、入ったところで安心せず、取るところまで一度確かめます。強く引かなければ抜けない、服まで一緒に引っ張られる。そのような時は、まだ直したほうがよいところがありそうです。
帛紗を薄いものに替えればよいのでしょうか
厚みのある帛紗なら、薄いものへ替えたくなるかもしれません。けれども、袋に入ることだけを基準にすると、お点前で使う時の扱いやすさが後になってしまいます。
帛紗は、たたんだまま持っているだけの布ではありません。広げ、さばき、道具を清めます。素材や厚みを選び直す時は、今使っている帛紗を先生に見ていただき、扱いに合うものを考えるほうがよいと思います。
袋の容量が足りないなら、袋を見直す。たたみ方で膨らんでいるなら、そこを直す。帯へつけにくいなら、身につけ方を確かめる。原因に合うところを変えれば、使い慣れた帛紗をすぐに手放さずに済むかもしれません。
入らないからと、帛紗の端を切ったり、洗って縮めようとしたりはしないでください。寸法を変えるための手入れは、お点前での扱いまで変えてしまいます。汚れが気になる時も、素材に合う手入れを購入先へ確かめたいですね。
秋の風炉では、菓子や花に秋が見えてきても、帛紗を清めに使う役目は変わりません。この時季だけ小さくたたむ、ということもありません。季節の取り合わせを楽しむためにも、支度の小さなつかえは取り除いておきたいです。
一枚の布なのに、中々思うようにならないものですね。入れるところ、取り出すところ。その短い動きから、私も丁寧に確かめていこうと思います。

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