お稽古で最初に習うのはお辞儀です。「お点前より先にお辞儀ですか?」と意外そうにされる方もいますが、茶道のお辞儀には種類があって、それぞれ意味があるのです。
お辞儀には「真・行・草」の三種類があります
茶道のお辞儀は、丁寧な順に「真(しん)」「行(ぎょう)」「草(そう)」と呼ばれます。
真のお辞儀は、いちばん丁寧なお辞儀です。両手のひら全体を畳につけ、深く頭を下げます。席入りのご挨拶や、お茶をいただくときの「お点前ちょうだいいたします」で使います。
行のお辞儀は、指の第二関節くらいまでを畳につける、中くらいの丁寧さのお辞儀です。お道具を拝見するときなどに使います。
草のお辞儀は、指先を軽く畳につける略式のお辞儀です。「お先に」と隣の方に会釈するときなどに使います。
なぜ使い分けるのか
習い始めた頃は「どうして三つも覚えるの?」と思っていました。正直に言えば、面倒だなと思ったこともあります。
でも長く続けるうちに、相手や場面に応じて敬意の深さを表し分けているのだとわかってきました。すべて同じお辞儀では、かえって心がこもらないのですね。
義母は挨拶にとても厳しい人でした。「お辞儀を見れば、その人の稽古がわかります」と言われたものです。当時は怖い言葉に聞こえましたが、今思えばその通りだと思います。
きれいなお辞儀のコツ
私が気をつけているのは、首だけで頭を下げないことです。腰から上体ごと倒すと、自然できれいなお辞儀になります。
それから、下げるときより上げるときをゆっくりと。急いで頭を上げると、せわしない印象になってしまいます。
呼吸に合わせるのもコツです。息を吐きながら下げて、吸いながら戻る。そうすると動きが慌てません。
お辞儀は日常でも役に立ちます
茶道のお辞儀は、お稽古場だけのものではありません。冠婚葬祭や改まった席で、自然ときれいなお辞儀ができると、それだけで気持ちが伝わります。
「真・行・草」という考え方は、お辞儀だけでなく、道具や点前、書のはこびにも通じる茶道の大切な考え方です。まずはお辞儀から、その入り口に触れてみてください。
たかがお辞儀、されどお辞儀。四十五年経った今も、私は一つひとつのお辞儀を大切にしたいと思っています。

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