「お点前って、何ですか?」
お稽古を始めたばかりの方に、よくこんなふうに聞かれます。
私も最初の頃は、その言葉の意味がよくわかりませんでした。先生(義母です)に「今日はお点前をやってみなさい」と言われても、何をどうしていいのか、頭が真っ白になったものです。
今日は、そんな「お点前とは何か」を、できるだけわかりやすくお話ししてみようと思います。
お点前とは、お茶を点てる一連の所作のこと
お点前(おてまえ)とは、お客さまの前でお茶を点てる際の、一連の所作や手順のことです。
道具を運び入れ、お湯を沸かし、茶碗を清め、抹茶を点てて、お客さまにお出しする。その一つひとつの動きに、決まった形があります。
「手前」という言葉は、もともと「自分の手元で行う作業」という意味だったそうです。それがお茶の世界では、「主が自ら点てる所作」という意味で使われるようになったと、ある本で読みました。面白いですね。
お点前にはいくつかの種類があります。一番基本となるのが薄茶点前(うすちゃてまえ)です。初心者の方がまず習うのも、たいていこちらです。
薄茶点前の大まかな流れ
難しく考えず、ざっくりとした流れを見ていただければと思います。
まず、道具を茶室に持ち込むところから始まります。棗(なつめ・抹茶を入れた器)と茶筅(ちゃせん・お茶を混ぜる竹の道具)、茶杓(ちゃしゃく・抹茶を掬うへら)、そして茶碗。これらを決まった手順で運びます。
次に、道具を清める手順です。帛紗(ふくさ・絹の布)で棗や茶杓を拭い、茶筅を湯で通して温めます。茶碗も一度お湯で温めてから、ふいておきます。
それからいよいよ、お茶を点てます。茶杓で抹茶を茶碗に入れ、お湯を注いで茶筅でシャカシャカと混ぜます。泡立ちを整えながら、お客さまに出せる状態に仕上げます。
お茶を出した後は、また道具を清めて、片付けて終わりです。
書き出してみると「それだけ?」と思われるかもしれませんね。でも、実際にやってみると、各手順に細かい決まりがたくさんあって、最初はもう大変でした。
最初は覚えることだらけで、頭がいっぱいでした
私がお点前を習い始めた頃の話をします。
先生に「帛紗の扱い方を覚えなさい」と言われても、どの手がどこに行くのか、自分の手がどこにあるのかさえわからなくなって。「右手ですか、左手ですか」と何度も聞きながら、先生に苦笑いされたものです。
帛紗一枚の扱い方だけで、なんと何十もの決まりがある。それを知った時は、「これは無理かもしれない」と思いました。
でも先生はいつも、「身体に覚えさせなさい。頭で考えるのではなく」とおっしゃっていました。その意味が、長い年月をかけてやっとわかってきた気がします。
最初から完璧にできる方なんて、いないと思います。みなさん同じように、何度も間違えながら覚えていくものです。
お点前は「型」ですが、その中に心がある
お点前を長く続けていると、この「型」というものが、単なる手順ではないのだとわかってきます。
道具を丁寧に扱うこと。お客さまのことを思いながら点てること。慌てず、一つひとつの動きに気持ちを込めること。そういうものが、型の中に込められているのだと思います。
お茶を点てる時間は、不思議と気持ちが落ち着きます。何か悩みがあっても、お点前をしている間は、自然と今この瞬間に集中できる。それが茶道の面白いところかもしれません。
お点前の中でお客さまにお出しするお茶、薄茶についてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。→おうす(お薄)とは?薄茶の意味と点て方の基本
また、お点前には欠かせないお菓子についても書いています。→茶道のお菓子の選び方と季節感
まずは見ること、そして真似ること
お点前を覚えるには、まず先生のお点前をよく見ることだと思います。細かい手の動きや、道具の置き方、間の取り方。目で見て、身体で真似る。それが一番の近道ではないでしょうか。
私は今も、稽古のたびに「ここはこうだったかしら?」と迷うことがあります。四十五年続けていても、まだまだわからないことがある。それがまた、茶道の奥深いところでもあります。
「お点前って何?」という疑問が、少しでも解けていただければうれしいです。
次のお稽古で、また一つひとつ確かめてみようと思います。

コメント