茶杓って、最初はあの小さなさじみたいなものがなぜそんなに大切なんだろう、と思っていました。
稽古を始めた頃、師匠に「茶杓を粗末に扱ってはいけません」と何度も言われました。その時は意味がよくわかりませんでした。でも長くお茶を続けるうちに、少しずつわかってきた気がします。
今日は茶杓のことを少し書いてみようと思います。
茶杓とはどんな道具なのでしょう
茶杓(ちゃしゃく)は、抹茶を茶入や棗からすくい取るための道具です。
細長い形で、先がスプーンのようにくぼんでいます。素材は竹が多く、象牙や木で作られたものもあります。長さはだいたい18センチほどで、お点前の中ではなくてはならない道具の一つです。
「こんな小さなものがなぜ?」と感じる方もいるかもしれませんね。でも、抹茶をすくう動作は、お点前の大切な一場面です。茶杓の扱い方に、点前する人の気持ちが表れると私は思っています。
茶入からすくい取るための茶杓は少し深め、棗(お薄)用は少し浅めになっていることが多いです。用途によって形が違うのも、面白いですね。
竹の茶杓に込められた思い
茶杓は、竹を削って作られます。
竹の節がどこにあるか、削り方の力加減、しなり具合。作る人によってずいぶん雰囲気が変わります。茶人が自ら削ることも多く、その人の手の跡が残るような、とても個人的な道具なのです。
師匠はよく「茶杓はその人が出る」とおっしゃっていました。若い頃の私にはよくわからなかったのですが、今はなんとなくわかるような気がします。道具に、作った人の呼吸みたいなものが残っているのだと思います。
利休居士が自ら削られた茶杓が今も残っており、大切に伝えられているというのを本で読みました。一本の竹に込められた思いを考えると、不思議な感じがします。
銘のこと、聞いたことはありますか?
茶席で「お茶杓のお銘は?」と尋ねる場面があります。
銘(めい)とは、茶杓につけられた名前のことです。季節の言葉や古典の一節から取られることが多く、夏なら「緑陰」「夕涼み」「清流」、秋なら「初雁」「山粧う」といった言葉が選ばれます。
亭主がどんな銘をつけたか、それをどう受け取るか。茶席での静かな楽しみの一つです。
私は銘を聞くたびに、「なるほど、そういう気持ちで点ててくださったのだな」とうれしくなります。言葉一つに、その日のお茶の心が込められているような気がして。
銘については以前「茶道具の「銘」のこと、気になって調べてみました」という記事にも書きましたので、よろしければあわせてお読みください。
銘の聞き方について
茶席では正客が亭主に「お茶杓のお銘は何とおっしゃいますか」と尋ねるのが習わしです。
銘を教えてもらったら、「ありがとうございます、よいお銘ですね」と応じることが多いです。私も最初はどう言葉にすればいいか迷って、師匠にずいぶん注意されました。
形式として覚えることも大切ですが、それよりもその言葉をちゃんと受け取ること、ではないかと私は思っています。亭主が選んだ言葉の意味を、少しでも感じながら応じたい。そう思うようになってから、お茶席が少し豊かになった気がします。
銘の言葉が気になると、あとで図書館で調べたりします。探求心だけは、なかなか止まりません。
小さな道具に、大きな世界が
茶杓一本の中に、季節があって、作者の思いがあって、席の心があります。
茶筅や茶碗と並んで、お点前を支える大切な道具です。道具のことを少し知っておくと、お茶席でのひとときがより楽しくなるのではないでしょうか。(茶筅についての記事もよろしければどうぞ。)
45年お茶を続けてきても、茶杓の前に立つとまだ背筋が伸びる感じがします。うまく扱えているのかどうか、自信のない私は今でも稽古のたびに確かめています。
また稽古で、ゆっくり確かめてみようと思います。

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