毎日、暑いですね。
朝のうちに庭の水やりを済ませるのが、この頃の日課です。
蝉の声も、日ごとに賑やかになってきました。
先日、ニュースで東京の美術館の展覧会を知りました。
「茶道具と銘をめぐる物語」という展覧会だそうです。
銘、という言葉に、ふと手が止まりました。
気になりませんか?
銘とは何だろう
銘とは、優れた茶道具に付けられた別名のことだそうです。
道具そのものや、保管する箱に記されています。
そこには茶人の想いと美意識が込められている。
展覧会の紹介文に、そうありました。
なぜ、この銘が付いたのか。
今回の展覧会は、そこを解き明かしていく企画だそうです。
面白いですね。
お茶会では、亭主が道具の取り合わせに想いを込めます。
客は銘を尋ねながら、その想いを読み解いていく。
銘は、亭主と客をつなぐ橋渡しの言葉なのかもしれませんね。
お稽古と銘
お稽古でも、銘はよく登場します。
「お茶杓のご銘は」と尋ねられる、あの場面です。
若い頃は、これが苦手でした。
とっさに季節の言葉が出てこないのです。
用意していた銘を、頭が真っ白になって忘れてしまったこともあります。
いつだったか、先輩が「若葉」と答えられたことがありました。
ちょうど新緑の頃で、お茶室の窓の外も青々としていて。
ああ、いいなあ、と思いました。
銘ひとつで、お点前の景色がすっと立ち上がるのです。
義母がよく言っていました。
「銘は道具の名前ではなく、その日の景色ですよ」と。
その時は意味がわからず、返事だけしていました。
今は少しわかる気がします。
同じ茶杓でも、春には春の、夏には夏の銘がある。
道具は同じでも、その日その日で景色が変わるんですね。
気になって、本をひらいてみました
銘には、和歌からとられたもの、禅語からとられたもの、季節の言葉からとられたものなど、いろいろあります。
茶杓だけではありません。
お茶碗にも、棗にも、銘の付いたものがあります。
お抹茶そのものにも茶銘がありますね。
お稽古で「お茶銘は」「お詰めは」と続けて尋ねる、あれです。
そう思うと、お茶の世界は言葉だらけです。
点前の手順ばかり追いかけていた頃には、気が付きませんでした。
45年もやっていて、まだ気付くことがあるのですから、不思議なものです。
今の時季なら「涼風」「清流」「朝顔」あたりでしょうか。
言葉ひとつで、お茶室に涼しい風が通る気がします。
言葉って不思議ですね。
「日々是好日」のような、禅語の銘もあります。
お軸でおなじみの言葉ですね。
同じ言葉でも、道具に付くとまた違って見えるから面白いです。
名のある道具の銘には、それぞれ物語があるといいます。
どんな人が、どんな想いで名付けたのか。
箱書きの文字を思い浮かべるだけで、なんだか胸がいっぱいになります。
展覧会は8月2日まで
展覧会は、東京の白金台にある畠山美術館で、8月2日まで開かれているそうです。
九州からは、なかなか遠い。
すぐには行けそうにありませんが、行ってみたいものです。
実際の道具を前にして、銘の物語を読む。
想像するだけで楽しくなります。
お近くの方は、足を運ばれてはいかがでしょうか。
そういえば、うちにも義母から譲り受けた道具が少しあります。
箱に文字の書かれたものも、あったはずです。
長いこと、開けたままにしていました。
涼しい日を選んで、ゆっくり読んでみようと思います。
義母がどんな想いで求めた道具なのか。
今なら、少しはわかるかもしれません。
庭では、朝顔のつるが伸びてきました。
咲いたら「朝顔」を銘に借りて、一服点てるのもいいですね。
次のお稽古では、お茶杓の銘をゆっくり考えてみようと思います。
今度こそ、真っ白にならないように。

コメント