先日のお稽古で、久しぶりに棗を持たせてもらう場面がありました。
茶道を始めた頃、棗という名前を聞いて「なつめ? あの赤い実のこと?」と思ったものです。形が似ているからついた名前だと後で知りましたが、その時は頭の中に赤い実がぼんやり浮かんでいました。
使い始めてからも、なかなか覚えられなくて。扱い方がぎこちなかったのか、師匠に「もう少し丁寧に」とよく言われていました。
棗って何に使うもの?
棗は、薄茶に使う抹茶を入れておく容器です。
小さくて丸みのある形で、蓋をすぽんとはめる仕組みになっています。木でできていて、外側に漆が塗ってあるものが多いです。黒漆のものが基本ですが、朱や溜塗(ためぬり)など、いろいろあります。
「薄茶器」とも呼ばれます。薄茶を点てる時に使うから、そう呼ばれるわけですね。濃茶には棗は使わず、陶器の茶入(ちゃいれ)を使います。この違いも、最初は混乱しました。
大きさの種類がいくつもあります
棗には大中小の三種類があります。
大棗、中棗、小棗と呼び分けます。一番よく使うのが中棗です。お稽古場でも、たいてい中棗を手にすることが多いと思います。
大棗はどっしりとした存在感があります。小棗は手のひらにすっぽり入るくらいの可愛らしい大きさです。小棗は扱いがより繊細で、持ち方も少し違います。
そのほかにも、「平棗(ひらなつめ)」という横広のものや、「長棗(ながなつめ)」と呼ばれるすらっとした形のものもあります。茶道具屋さんで見かけると、いろいろな形があって面白いですね。
蓋の扱い方が難しかった
棗で一番戸惑ったのが、蓋の扱いです。
蓋をどこに置くか、どのタイミングで開けるか、なかなか身につきませんでした。畳の上に蓋を置く向きも決まっていて、師匠から「それじゃない」と何度も直してもらいました。
師匠はいつも「道具を丁寧に扱いなさい」とおっしゃっていました。棗は高価なものも多いですし、漆の表面はとてもデリケートです。爪が当たっただけで傷になることもあります。指の腹でそっと持つようにと教えてもらいました。
茶巾(ちゃきん)で棗を清める動作も、最初は「なぜ外側を拭くの?」と不思議に思いました。お客さまにお道具を清潔にお見せするという意味があるのだと、後から知りました。作法には一つひとつ意味がある、ということを実感した場面のひとつです。
棗の模様や装飾を楽しむ
棗は実用品でありながら、美術品でもあります。
蓋の上や胴の部分に、金蒔絵(まきえ)で絵が描かれているものがあります。松や梅、秋草など季節の模様がほどこされていて、お稽古でそういう棗が出てくると、思わず「きれいですね」と声が出てしまいます。
名のある棗には「銘(めい)」がついているものもあります。「雪の浦」「春の海」など、情景が浮かぶような名前がついていて、茶道の世界の奥深さを感じます。
私はまだ自分の棗を一つしか持っていませんが、いつか気に入ったものをもう一つ手に入れたいなと思っています。季節に合わせて使い分けるのが、茶道の楽しみのひとつでもありますから。
棗の扱い方は、言葉で読んだだけではなかなか伝わらないものです。実際にお稽古で手にとって、先生に教えてもらいながら身につけていくものだと思います。
また来月のお稽古で、しっかり確かめてみようと思います。

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