中置は、何を真ん中に置くのでしょう。名前を短くしてくれるのはありがたいのですが、肝心なところまで省かれると、初めての方は困りますね。
真ん中へ置くのは、湯を沸かすための風炉です。「なかおき」と読みます。茶室全体の真ん中ではなく、お点前をする畳の中央に据えます。ここまで言葉を足すと、少し姿が浮かぶでしょうか。
私も長くお茶を続けていますが、短い言葉を知っているだけで、わかったつもりになることがあります。人に伝えるとなると、案外難しいです。
中置は、風炉の置き方を表す言葉です
風炉は、炭火を入れ、釜を掛けて湯を沸かす道具です。中置では、その風炉をいつもの位置から点前畳の中央へ移します。
表千家では、秋の深まる十月に見られる扱いです。暑い頃には客から遠ざけていた火を、少し客へ近づけます。表千家不審菴の「十月 風炉の名残」でも、この置き方を、火を客に近づける心遣いとして紹介しています。表千家不審菴「十月 風炉の名残」
「中置のお点前」と聞くと、初めから終わりまで別のことを覚えるようで、私は少し身構えます。けれど、言葉の意味を知りたい時には、風炉をどこに据えるかを表した名前、と受け取ると入りやすいと思います。その置き方に合わせて、お点前の扱いも変わっていくのですね。
「左へ置く」の左が、くせものです
中置では、水指を風炉の左側に置きます。これは、お点前をする人から見た左側です。細長い姿の「細水指(ほそみずさし)」を使うことが多くなります。茶道 表千家「風炉 中置の水指運びの足さばき」
この、誰から見て左なのかというところ。説明ではつい省いてしまいますが、大事ですね。客の側から眺めるのと、点前をする側から見るのとでは、左右の受け取り方が変わります。
私は右、左と文字だけで覚えようとすると、自信がなくなります。お茶の言葉を覚えるのに、向いている方向まで確かめなければならない。中々忙しいです。
図や写真を見る時も、どちらに亭主が座るのかを確かめてから見ると、迷いが少なくなると思います。亭主というのは、その席で客を迎え、お茶を差し上げる側の人です。
風炉と水指の位置がわかってきたら、細かな置き合わせや手の運びは、習っている先生に見ていただくのがよいですね。文章の「左」だけを頼りにするのは、私も心もとないです。
白露のうちに、名前の意味から
今は白露の頃。中置がよく行われる十月には、まだ少し間があります。秋の言葉だからと、九月からすぐ中置に変わるわけではありません。
季節の扱いは、覚えたと思う頃に次の季節になります。それでまた一年後。もう少し長く同じことをさせてほしい、と思いたくもなりますね。
ただ、手順を全部思い出そうとする前に、「何を、どこの真ん中へ置くのか」を確かめるくらいなら、落ち着いて始められそうです。風炉を点前畳の中央へ。今はその姿を、きちんと思い浮かべておこうと思います。
秋の夜長には、少しずつ覚え直す時間もいただきましょう。

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