習い事というと、できなかったことが、できるようになる楽しみがありますね。お茶もそうなのですが、四十五年以上続けている私には、まだよくわからないことが残っています。それでもやめずにいるのですから、覚え終わることだけが楽しみではないのでしょう。
茶道を習うよさは、お茶の点て方やいただき方を覚えながら、人への心配り、物を丁寧に扱う所作、季節の楽しみ方を学べることだと思います。秋分へ向かう頃なら、お菓子の名前に秋を感じることも、その学びの一つです。
「茶道 習い事 メリット」で知りたい、身につくこと
習い事は「ならいごと」と読みます。先生などから教わり、練習を重ねて、技術や作法を身につけることです。茶道では、その練習を稽古と呼びます。
お茶を習うと、客として菓子やお茶をいただく作法と、亭主としてお茶を差し上げるお点前を学びます。亭主とは、その席で客を迎える人のこと。自分が飲む側にも、用意する側にもなるところに、お茶の稽古のよさがあります。
たとえば、茶碗を差し出す時。自分の手から離れればそれで済むのではなく、相手が受け取りやすいかまで気に掛けます。客の側では、用意してくださった一服を受け、感謝を伝えます。形を習いながら、その場にいる人へ目を向ける練習にもなるのですね。
挨拶をする時に手元の動きを止める。器を置く時に、途中で手を離さず静かに置く。こうした所作は、家で食事をする時や、人に物を渡す時にも思い出せます。ただ、茶道を習えば自然に何もかも美しくなる、とまでは言えません。私も気をつけなければ、つい自分の用事を急ぎます。
それでも、自分の動きを見直す場所があるのは、ありがたいです。
花や焼物、菓子、掛物の言葉などに親しむ入口もあります。全部に詳しくなってから入門する必要はありません。花が好きな方なら花から、お菓子が好きならお菓子から。自分の好きなものを手掛かりに、少しずつ知る楽しみがあります。
茶道の稽古では、同じことを何度も習います
一度教わったことを、また習う。大人になると、そのような時間は案外少ないのではないでしょうか。
お茶の稽古では、道具を扱う動作を部分ごとに練習し、それをお点前の流れの中で繰り返します。順番を覚えるだけでなく、手の添え方や身体との距離なども、先生に見ていただきます。自分では同じようにしているつもりでも、外から見ると違うことがあるのですね。
本や動画は、名前や流れを確かめる助けになります。ただ、自分の手に余分な力が入っているかどうかまでは、中々わかりません。目の前で教えていただく意味は、そのようなところにもあると思います。
覚えるのが早い人に向いている習い事なのでしょうか。
私は、それだけではないと思います。すぐには覚えられなくても、教わったところへ戻ってみる。同じ所で迷っても、前には気づかなかったことが一つ見える。そんな進み方もあるでしょう。
もちろん、間違えてばかりでは嫌になる日もあると思います。毎回心が落ち着き、すがすがしい気分になると約束はできません。初めのうちは、手順を追うだけで忙しいでしょうから。落ち着きを求めて始めたのに、覚えることが沢山あった。そのくらいのつもりでいるほうが、無理なく付き合えるかもしれませんね。
季節を知る楽しみは、家にも持ち帰れます
秋のお菓子に、萩の名がついている。花そのものを知らなくても、名前を聞けば、どんな姿なのだろうと思いますね。あとは実際の花に出会った時に、あのお菓子の萩だと結びつく。こういう覚え方は楽しいです。
季節の言葉を試験のために覚えるのとは、少し違います。味や形と一緒に覚えたものが、暮らしの中でふと顔を出します。
庭のある暮らしをしていても、私は花の名前を何でも知っているわけではありません。見慣れたものでも、名前を尋ねられると困ることがあります。お茶を続けているから詳しいはず、と思われると、自信がないのです。
けれど、知らない花が一つあれば、まだ覚える楽しみが一つある。そのくらいに思っていたいですね。
秋分の頃も、お茶では風炉を使う季節が続きます。風炉は釜を掛けて湯を沸かす道具ですが、そのそばに添える花や菓子には秋が入ってきます。同じ支度の中にも、少しずつ変わるものがある。お茶の季節は、一度に全部が入れ替わるわけではないのですね。
家で虫の音を聞く時にも、菓子の名を思い出す時にも、稽古で知ったことがつながってくる。私には、これも習い事のうれしいところです。茶室にいる時間だけで終わらない楽しみがあります。
習い事として続けるなら、費用と時間も大切です
よいところを聞いても、暮らしの中で続けられるかは別に考えたいですね。
茶道には月謝のほかに、持参する小物や、茶会などの行事にかかる費用があります。ただし、何が月謝に含まれ、何が別になるかは教室ごとに違います。裏千家淡交会北九州支部も、月謝は稽古場や回数、稽古内容によって異なるため、入門前に確認するよう案内しています。裏千家淡交会北九州支部「お稽古のはじめ方」
入門を考える時には、月謝の額だけでなく、次のことも聞いておくと見通しがつきます。
- お茶やお菓子の代金は月謝に含まれるか。
- 初めに自分で用意する物と、その費用はどのくらいか。
- 茶会や行事への参加は任意か。別に費用がかかるか。
- 月の稽古回数と、一回に必要な時間はどのくらいか。
- 欠席や休会の時は、どのような扱いになるか。
許状などを受ける段階で費用が必要になる場合もあります。許状は、流儀に応じて次の学びを許されるものなどで、種類や意味は同じではありません。いずれ必要になる費用や、申請を相談する時期も、先生に尋ねてよいと思います。
お金のことは言い出しにくい、と感じるかもしれません。けれど、知らないまま始めて困るより、初めにわかっているほうがお互いに安心でしょう。
通う時間も忘れたくありません。稽古の時間に往復を加えると、思ったより長くなることがあります。忙しい月にも通えそうか。帰ってから家の用事を抱え込まないか。習い事を楽しむために、予定に少し余裕を残しておきたいですね。
大人から始める茶道は、自分の楽しみを一つ持って
始める時に、立派な目標まで決めなくてもよいと思います。お茶を出されて戸惑わずにいただきたい。焼物を手に取って見たい。日々の用事から離れて、習う時間を持ちたい。そのどれも、十分なきっかけです。
教室を選ぶ時には、その気持ちを先生に伝えてみてください。趣味としてゆっくり続けたいのか、先へ進んで深く学びたいのかで、希望する稽古も変わります。教え方や通い方が、自分に合いそうかを確かめたいですね。
身体に合う稽古の形もあります。たとえば裏千家の初心者向け教室では、椅子席で稽古できる教室が案内されています。どこでも同じ対応とは限りませんので、座り方などに希望があれば、申し込む前に具体的に確かめます。裏千家「初心者のための茶道教室・よくあるご質問」
私は表千家のお茶を長く続けてきましたが、何が一番好きなのかと考えると、今も一つには決められません。お茶そのものも好きですし、季節の花にも心が向きます。うまくいかないところが気になって、また確かめたくもなります。
習い事のよさは、始める前に思っていたものから変わってもよいのでしょう。作法を覚えたくて始めた方が、いつの間にか菓子や花を楽しみに通っていても、それはうれしいことです。
この秋も、まだ知らないことを一つずつ、楽しみに学んでいこうと思います。

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