「ガラスの水指」と「平水指」は、同じものを指すのでしょうか。
涼しそうな水指の話になると、二つの言葉が並ぶことがあります。私は長い間、どちらも夏の水指というくらいに考えていました。けれども、ガラスは材料の名前。平水指は形の名前です。
ここを分けてみると、道具の見方が少しわかりやすくなります。
水指は何に使う道具でしょう
水指は「みずさし」と読みます。お点前で使う清らかな水を入れておく道具です。
釜の湯を使ったあとに水を足したり、茶碗を清めるための水を汲んだりします。風炉の脇に置かれますので、茶碗や棗ほど手に取ることはなくても、お客様の目にはよく入ります。
焼物、塗物、木地、金属、ガラスなど、材料はさまざまです。形にも背の高いもの、丸いもの、四角いもの、口が大きく開いたものがあります。
水を入れる器なのに、これほど姿が違う。
面白いですね。
ガラスの水指とは
ガラスの水指は、名前の通り、ガラスで作られた水指です。
透明なものなら、中の水や光の揺らぎが見えます。淡い青や緑のガラスも、水辺のような色を感じさせます。実際に茶室の温度が下がるわけではありませんが、目に入った時に、すっと気持ちが涼しくなるのではないでしょうか。
そのため、ガラスの水指は風炉の暑い時季によく似合います。残暑の厳しい処暑の頃にも、水の気配を見せる道具としてうれしいものです。
ただし、ガラスなら何でも夏向き、と決めてしまうのは少し違うように思います。厚みのあるガラス、色の濃いもの、模様のあるものでは、受ける感じも変わります。ほかの道具や、その日の席の趣向も見なければなりません。
私は「透き通っていれば涼しい」と簡単に考えてしまうことがあります。長くお茶をしていても、取り合わせには中々自信がありません。
平水指とは
平水指は「ひらみずさし」と読みます。
普通の水指よりも背が低く、横に広がった形の水指です。「平」は、平たい形を表しているんですね。口が広いため、蓋を開けると水面が大きく見えます。
平茶碗と名前が似ていますが、平茶碗はお茶を点てる茶碗。平水指は水を入れておく道具です。どちらも広く浅い姿ですが、役目は違います。
平水指も、主に風炉の暑い時季に用いられます。広い水面を見せることで、夏の席に涼しさを添えるためです。冷房のなかった頃は、水そのものの姿や、蓋を開けた時の気配まで、おもてなしにしていたのでしょう。
水が見えるだけで涼しい。
昔の方は、目で感じる涼しさを大切にしていたんですね。
ガラスと平水指は、分けて覚えるとわかりやすいです
ガラスの水指は、材料に目を向けた呼び方です。平水指は、形に目を向けた呼び方です。
ですから、ガラスで作られた平水指もあります。これは「材料はガラス、形は平水指」ということになります。また、焼物や木地で作られた平水指もあります。
私はここが少し曖昧でした。夏の水指を皆、同じように見ていたのです。
けれども、透き通るガラスから感じる涼と、広く見える水面から感じる涼は、よく考えると少し違います。ガラスは光や水の揺らぎを見せます。平水指は、水面の広がりを見せます。
同じ「涼しい」でも、道具によって見せ方が違うのでしょう。
なぜ処暑の頃にも使うのでしょう
処暑は、暑さが少しずつおさまる頃といわれます。それでも九州では、まだ残暑が続きます。風炉の季節も十月までですから、水を感じさせる道具には、もうしばらく出番があります。
盛夏なら、ひと目で涼しいガラスや広い水面がよく似合います。秋近しの頃には、同じ道具でも、過ぎてゆく夏を惜しむように見えることがあります。
季節の道具は、暦の日付だけで急に取り替えるものではないのでしょう。その日の暑さ、光、ほかの道具との釣り合いを見ながら選ぶ。そこが難しく、楽しいところだと思います。
ガラスの水指は材料の名。平水指は形の名。そして、どちらも暑い風炉の席に、水の涼を運んでくれる道具です。
今度水指を見る時は、涼しそうと思うだけでなく、ガラスの光なのか、広い水面なのか、その涼しさのもとをゆっくり眺めてみようと思います。

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