六月に入り、お稽古場の設えが風炉に替わりました。毎年のことですが、この切り替えの時期は気持ちも新たになります。
お茶を習い始めた方から「風炉と炉って何が違うんですか?」と聞かれることがあります。今日は私なりに、風炉と炉の違いを書いてみようと思います。
風炉と炉、いちばんの違いは「釜の位置」
風炉(ふろ)は、畳の上に置いた風炉という道具に釜をかけます。炉(ろ)は、畳を切って床に埋め込んだ炉に釜をかけます。
使う時期がはっきり分かれています。風炉は五月から十月まで。炉は十一月から四月まで。ちょうど一年の半分ずつです。
なぜ分かれているのか。夏は火をお客様から遠ざけて涼しく、冬は火をお客様に近づけて暖かく。おもてなしの心がそのまま形になっているのだと、私は思います。
点前はどう変わるのか
釜の位置が変わると、点前の動きも変わります。柄杓の扱い、居前の向き、道具を置く位置。細かいところがあちこち違ってきます。
毎年五月になると「あれ、どうだったかしら?」と戸惑います。半年ぶりですから、体が炉の動きのまま覚えているのです。
義母から教わっていた頃、「季節が変われば点前も変わる。それがお茶の面白さです」と言われたことがあります。その時はただ覚えるのに必死でしたが、今はその言葉の意味が少しわかる気がします。
風炉の季節の楽しみ
風炉の時期は、道具も夏らしくなります。水指は涼しげなガラスや染付のもの。茶碗は口の開いた平茶碗。お菓子も葛や錦玉の涼しげなものになります。
茶花も夏の花に変わります。木槿(むくげ)、桔梗、山紫陽花。朝に咲いて夕方にはしぼむ花を、一期一会の思いで入れます。
設えのすべてで涼を感じていただく。エアコンのなかった時代から続く、日本人の知恵だと思います。
初心者の方へ
風炉と炉、両方の点前を覚えるのは大変です。私も四十五年続けてきて、いまだに季節の変わり目には戸惑います。
でも、焦らなくて大丈夫です。毎年繰り返すうちに、少しずつ体が覚えていきます。稽古とは一より習い十を知り、十よりかえるもとのその一。利休さんの道歌の通りだと思います。
六月のお稽古場は、青楓や紫陽花に囲まれて、いちばん緑の美しい季節です。風炉の点前を楽しみながら、また一年の半分を過ごしていこうと思います。

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