帛紗とは、茶道具を清めるための小さな布です
帛紗(ふくさ)は、お点前の中で茶入や棗(なつめ)、茶杓(ちゃしゃく)などを清めるために使う布です。お稽古を始めたばかりの頃は、この小さな布がなぜ必要なのか、私もよくわかっていませんでした。先生の手元を見ながら、見よう見まねで使い始めたような気がします。
大きさは、おおよそ27〜28センチ四方。正方形に見えますが、縦横の寸法が少し違うものもあります。お点前用には、絹100%の「正絹」で、塩瀬という織物の帛紗がよく使われます。以前の記事では羽二重と書きましたが、帛紗の生地をすべて羽二重とするのは正確ではありませんでした。帛紗の素材と寸法も参考にしてください。
「清める」というのは、汚れをこすり落とすことだけではありません。お客様の前で道具を丁寧に扱い、清浄であることを示す意味があります。柔らかな絹であっても、力を入れて拭いてよいわけではないのですね。道具を大切にする気持ちが、手の動きに表れるものだと思います。
帛紗の色と、最初の一枚の選び方
私が続けている表千家では、女性は朱色、男性は紫色が基本です。朱色は橙がかった赤で、赤橙色と説明されることもあります。裏千家の女性は赤色が一般的です。同じ「ふくさ」でも流派で違うので、買う前に先生へ色を確かめておくと安心ですね。流派による色の違いが紹介されています。
私はずっと朱色の帛紗を使ってきました。男性のお稽古で紫の帛紗を見た時、なんだかかっこいいなと思ったことがあります。女性でも紫を使う場合がありますが、「資格を取れば紫」と一律に覚えない方がよいでしょう。先生方の帛紗の色だけを見て選ばず、ご自分の教室での扱いを聞いてくださいね。
色とともに確かめたいのが、素材と厚みです。練習用には人絹などもありますが、正絹とは手触りや折った時の感じが違います。「匁(もんめ)」という表示は重さの単位で、厚みを選ぶ目安にもなります。厚ければよいというものでもありません。初めの一枚は、先生に素材と厚みまで相談して選ぶと、迷いが少なくなると思います。
出帛紗と古帛紗は、何が違うのでしょう
道具を清める帛紗のほかに、出帛紗(だしぶくさ)や古帛紗(こぶくさ)があります。名前が似ているので、私も初めは混乱しました。お店で柄のきれいな布を見つけても、お点前用の無地の帛紗と同じつもりで買わないようにしたいですね。
出帛紗は、お点前用の帛紗とほぼ同じ大きさで、表千家では濃茶の時に茶碗へ添えるなどして使います。古帛紗はそれより小さく、お点前用の帛紗の四分の一ほどの大きさです。裏千家では茶碗の下に敷くなど、流派やお点前によって使い方が変わります。裂地の文様を楽しめるのも、この道具のよいところですね。青峰堂の説明にも、二つの用途が紹介されています。
以前、古帛紗を「お菓子を乗せてお客様にお出しするもの」と書きましたが、それを基本の用途として覚えるのは適切ではありませんでした。お菓子をいただく時に使う懐紙とは、分けて考えてください。清めるための帛紗なのか、茶碗や道具に添えるものなのか。使う場面から覚えると、少しわかりやすいでしょうか。
畳み方と帛紗さばきは、分けて覚えます
帛紗をしまうために畳むことと、お点前で道具を清めるために「さばく」ことは、目的が違います。帛紗さばきは、決まった手順で布を扱い、道具を清めるのに適した形に整える所作です。お稽古の早い時期に習いますが、私は45年以上続けていても、向きや角の揃い方が気になります。手順はわかっているつもりでも、中々思うようにはいきません。
ここでは、表千家の懐中する時の畳み方を書いておきます。帛紗を平らに広げ、縫い目のない「わさ」を右に置きます。左半分を右半分へ重ね、下半分を上へ折り上げます。四分の一になったら、右半分を左へ重ねて八分の一にし、折り目のある辺を下にして懐中します。向きは千紀園の図入りの手順を見ると確かめやすいです。
以前の「二つに折り、また二つに折って細長くする」という説明だけでは、どちらへ折るのかわかりませんね。また、これだけで道具を清める時の帛紗さばきまで済むわけではありません。さばき方は流派や清める道具によって違いますので、あくまで参考にして、先生の教えを優先してください。
師匠には、角を合わせることより心を込めることが先だと教わりました。その時はよく意味がわからなかったのですが、形ばかり気にして手を急がせてはいけないのだと思うようになりました。向きを一つずつ確かめて、丁寧に扱う。角もその中で整えていけたらと思います。
腰につけるところから、お点前につながります
表千家の通常のお点前では、帛紗は男女とも左の腰につけます。着物では帯などに挟み、必要な時に取り出してさばきます。ただ左へ差し込めばよいのではなく、折った帛紗の向きや、取り出しやすい位置も大切です。洋服でお稽古する時のつけ方は、教室で確かめてくださいね。
私も初めの頃は、どこへ挟めばよいかわからず、先輩によく直してもらいました。師匠からは、帛紗の出し方一つにもその人のお茶が表れると教わりました。道具を清める手つきだけでなく、取り出して、使って、腰へ戻すところまでつながっているのですね。
畳む練習だけをしていると、お点前の途中で向きがわからなくなることもあります。腰から取り出すところも含めて確かめると、自分がどこで迷うのか気づきやすいと思います。速くさばこうとせず、手を落ち着けたいものです。
使った後の手入れと保管
帛紗は使ううちに傷むものですが、長く使うと手に馴染んでくるように思います。私の手元にも、随分長く使っているものがあります。愛着があるからこそ、使い終わったら抹茶の粉や汚れがついていないか、見ておきたいですね。
手入れについては、以前の記事の「手洗いで優しく洗い、陰干しにする」という説明を改めます。お点前用の帛紗は、基本的に水洗いを避けます。絹は水で縮んだり、風合いが変わったりすることがあります。人絹なら洗えるとも限りません。抹茶の粉は柔らかな刷毛などで軽く払い、強くこすらないようにします。ほんぢ園の手入れ案内でも、水洗いや硬いブラシ、除菌シートの使用を避けるよう案内されています。
落ちない汚れは無理に取ろうとせず、購入したお店へ相談するのがよいと思います。保管はきちんと畳み、直射日光や湿気を避けて。陰干しという言葉だけで、洗っても大丈夫と思わないでくださいね。ほつれや生地の傷み、目立つ汚れが出てきたら、使う場にふさわしいか先生に見ていただき、替え時を考えましょう。
よくある質問
帛紗と袱紗は別のものですか? どちらも「ふくさ」と読みます。茶道具にも表記の違いがありますので、漢字だけでは判断できません。ご祝儀袋などを包む袱紗を、そのままお点前用として選ばず、「茶道のお点前用」と確かめてください。
ハンカチで代わりになりますか? 正式なお点前では代用しません。布の大きさや厚み、仕立てが違い、さばいた時の形も変わります。お稽古を始める時は、教室で指定された帛紗を用意するのが安心です。
畳み方は本や文章だけで覚えられますか? 手順を思い出す助けにはなりますが、指の位置や布の向きは文字だけでは難しいです。先生の手元と自分の帛紗を見比べて、迷うところを確かめてくださいね。
まとめ
帛紗は小さな布ですが、清める意味も、色の決まりも、畳み方もあります。風炉でも炉でも手にする道具だからこそ、慣れたつもりにならずに扱いたいと思います。45年経っても、ちゃんとできているだろうかと気になるものですね。
これから始める方は、次のお稽古で先生に「最初の一枚はどの帛紗がよいでしょうか」と聞いてみてください。ご自分のお稽古に合った一枚を知るところから、始めてみませんか。

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