お稽古場の床に、一輪だけ花を入れました。それだけで茶室の空気が変わります。
茶花は華道と違って、決まった型がありません。だからこそ難しくもあり、面白くもあります。今日は茶花の入れ方の基本を書いてみます。
「生ける」ではなく「入れる」
茶花は、花を「生ける」と言わず「入れる」と言います。
技巧を凝らして形を作るのではなく、花が野で咲いていたままの姿を、そっと花入れに移す。利休さんの利休七則にも「花は野にあるように」とあります。
私は最初、この「野にあるように」が一番難しいと思いました。作為なく、でも美しく。何十年やっても、これでよしと思える日は多くありません。
花の選び方
茶花に向くのは、野の花のような楚々とした花です。椿、木槿、桔梗、京鹿子、蛍袋、糊空木。
香りの強すぎる花は避けます。お茶やお香の香りの邪魔をするからです。それから、毒のある花、名前の縁起がよくない花も避けるとされています。
数は一種か二種。奇数がよいとされますが、何より「多すぎないこと」です。義母からは「花は引き算」と教わりました。
一輪で様になる入れ方のコツ
私が長年の稽古で覚えたコツを、いくつかご紹介します。
まず、花の「顔」を見つけること。花にはいちばん美しく見える向きがあります。手に持ってゆっくり回して、この花の顔はどこかしら、と探します。
次に、枝ぶりを生かすこと。まっすぐな枝より、少し曲がった枝のほうが動きが出ます。自然の曲がりをそのまま使います。
そして、花入れとの釣り合い。花が花入れの高さの一倍半くらいに収まると、落ち着いて見えることが多いです。これはあくまで目安ですが。
水切りと水揚げ
花を長持ちさせるには、水揚げが大切です。枝を水の中で斜めに切る「水切り」が基本。切り口を新しくしてすぐ水を吸わせます。
朝早く、花がまだ露を含んでいるうちに切るのがよいとされます。夏の花は特に傷みやすいので、私は稽古の朝に庭で切って、すぐに入れるようにしています。
茶花は毎日の楽しみになります
茶花を意識するようになると、散歩の目が変わります。道端の草、隣の庭の木、山の斜面。「あ、あれは茶花になる」と、季節の花が目に飛び込んでくるようになるのです。
お花屋さんの花も良いですが、身近な野の花を一輪。今日の床に何を入れようかと考える時間は、お茶の楽しみの中でも格別なものですよ。

コメント